日本のヘルスケアIT化はどう進展していくか
これまで医療のITに関して色々書いてきましたが、日本では実際どうなのか?というと大学病院や大きな病院などは別としてあまりIT化は進んでいないのが現状です。
たまたま訪れた病院の会計をのぞいて見たら、電卓で請求金額を計算していました。今や小売店でも自動支払機がレジにあるのと比べると別の国にいるようです。しかしこれは仕方のないことかもしれません。一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会の調べでは、2015年の資料として、診療所では電子カルテ導入率は3%、一般的な中小病院では50%となっており、未だアナログでやっているところが多いのが現状です。電子カルテを導入するには、それなりの規模を必要とし、仮に導入したら、導入コストを上回る、人的・時間的メリットがないとできません。
また、基本的に医師の診療、看護師の処置などはアナログな仕事でこれまで進んで来ました。これをITが代わりに行うと言うのはまだ先の話です。ですので、彼らの仕事に直接PCは必要ないと言うことです。必要がなければ、キーボードに触れることもないですから覚える機会はありません。個人的にfacebookやinstagramをやる場合でも日本は今やiPhoneに代表されるスマホを使用します。キーボードとは無縁です。
そのようなわけで、導入理由がなかなか見つけられないのが事実です。私が以前関わっていたクリニックでは、5年前まで完全に紙カルテでした。院長がレセプトのPCを導入したいと言った時、事務職員は総出で大反対でした。大人になってPCを覚えなければならないと言うのが相当苦痛のようでした。お一人はそれが嫌で退職されました。結局、導入しましたが、今はそれが普通のように使っています。(レセプトとは支払基金に対する請求書を出すことです。)
しかし、レセプトは一つの専用ソフトウェアであって、PC全般を使うこととは縁遠いです。院内に掲示する案内を作るにしてもwordの使い方が分からないので、一日がかりです。これでは、コストパフォーマンスが悪すぎます。
一般企業でしたら、すでに先輩社員がwordやexcelやpowerpointを使っているので分からないところがあればすぐに教えてもらえる環境がありますが、クリニックや中小病院では、知っている人が少ない、また、使う機会が少ないので上達は難しくなります。
これは、医療機関に限ったことではないようです。ニールセンのレポートによると先進33カ国の中で日本のPCスキルは最低のようです。日本ではiモードのように携帯電話でのコミュニケーション手段が異常に発達したからではないかと推察します。
だからと言って、医療のIT化が絶望的かと言うと、そうでもないでしょう。何せ日本人は習得する能力は秀でていると思います。いざ、やらなければならないとなると、頑張って習得するでしょう。パナソニックやソニーなどが介護事業に参入してきていますがこれらの企業は初めからITを駆使した体制を作っていくので、社会福祉法人や小さな介護事業所は効率化の面で相当苦戦すると思われます。一方、医療機関は民間企業の参入ができないので足並み揃えて遅れを取ると思われます。このあたりが欧米の医療機関と全く違うところでしょう。