DX化を阻む行政の慣習

この2年ほどテレビでよく見るシーンは、保健所での謀殺された仕事ぶりです。皆さん、深夜まで頑張っておられて頭の下がる思いです。しかし、このシーンを見て残念に思うのは、効率的に情報共有されていないのではないかと危惧するのです。各地の保健所が住民からの相談を受けて、医療機関で問い合わすのがほとんどが電話での会話と内容を書くシーンです。これでは机の近くの人とは情報共有されても、保健所内で情報共有する事は難しいし必ず漏れが起こります。ましてや県内の他の保健所との共有、他の部署との共有、医療機関との情報共有は夢のまた夢でしょう。

これを見て、皆さんが職員のITリテラシーが低いと思われたら間違いです。保健所で働く人々は保健師の皆さんで看護師の上級国家資格です。非常に優秀で責任感のある方々です。しかし、そもそも看護師の仕事はコンピューターを使う仕事ではなく、患者さんと対面し治療し相談に乗るのが仕事ですから自ずとパソコンを使う場面が少なくなります。つまり、パソコンを駆使する経験がなかっただけです。私も看護師さんに頼まれてOfficeを教えた事がありますが、非常に飲み込みが早いです。

本来なら、保健師の横にパソコンを使う人がいて、保健師は患者さんの相談に乗ることに集中すべきです。横に座る人がデータを入力していけば良いのですが、組織がそれを許しません。なぜならそのような方法があることを知らないし、人員の確保も難しいし、人件費も増えるし。と反対できる理由は山のように出てきます。

伝統を重んじる仕事とはなんでしょう。実は行政です。行政ほど前例のない事はやりたくない組織です。各人はこんな仕事をしていては非効率だ。もっと効率的にできないのかと思っていても、組織はそれを許しません。必ず、反対の理由を山ほどあげてきます。

9月にデジタル庁が発足しますが、おそらく書類の山になるでしょう。各人がITリテラシーを持っていても組織は許さないし、関係省庁とのやりとりはFAXがあったり、ハンコが必要だったり、コピーを要求されたり、全く機能しない事は明白です。デジタル改革担当大臣、平井卓也氏への報告書は必ずプリントされた紙でしょう。大臣がiPadで報告書を読む事は間違いなくないでしょう。

行政のIT化が進まない1番の原因は、業務フローの慣習です。ITを導入すると、簡素化できるのですが、業務フローは今までと変わってきてしまいます。変わるというより簡素化、スピード化されるのですが、組織は「変わる」と困るのです。

例えば、職員が報告書を直属上司に提出する。次に直属上司はハンコを押して、その上の直属上司に提出する。さらにハンコが押されて~~~~~。

しかし、DX化が進むと、書類作成者がフォルダに保存した瞬間、全ての系列上司がすぐに確認することができる、しかも既読マークがつくので、最短で1分そこそこで決済が終わるのですが、そうなると上司の面目が立たなくなります。飛び越えてその上の上司が先に決済すると中間上司は面目が立たなくなる。そんなことが起こるとヒエラルキーが壊れてしまいます。

市長が、SNSで市民と繋がって、直接やり取りすると、快く思わない職員もいるでしょう。あくまでも市民は窓口を通して、しかるべき書類を作成して、必要な手続きを取っていかないと自分の知らないところで事が進んでしまうと自身の業務フローが壊れてしまいます。できれば、市長は市長室に座っていて、各担当部署からの報告書を見て判断してほしいと思うでしょう。

しかし、スピードを求められる仕事は限りなく可能な方法で事を進めていく必要があります。最初に挙げた保健所の作業は人の命が関わっているので、悠長な業務フローは助かる命も助からない事になります。

解決策は、上層部が変えてしまう事です。すると、組織にいる人は、『変わった』と認識してくれます。今まで個人で悶々と「もっといい方法があるのに」と思っていた人も率先して変革を起こしてくれるようになります。

私も行政の様々な人と仕事をしてきました。個々人は非常にフレキシブルです。組織の硬直化を正す事ができれば変革はできるはずです。

何度も言うようですが、命に関わる業務は早急に変えるべきです。

国のトップも使いこなせるアメリカ

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です