「抗菌薬インターネットブック」誕生の成り立ち

「抗菌薬インターネットブック」が世に出てから20年が経過しました。そこで、記録としてその経緯を残しておこうと思います。

「抗菌薬インターネットブック」という日本で処方されている抗菌薬のインターネット上のデータベースです。これを公開したのは、1996年の12月でした。つまり、公開から20年も経ちました。私が最初に手掛けたwebサイトです。

公開からすぐに大きな反響を呼びました。医学系の雑誌に寄稿を頼まれたり、大学での講演を依頼されたり、さらに、科学技術庁の「科学者が見るべき100のホームページ」という冊子に薬に関しては唯一紹介されたました。

 

この「抗菌薬インターネットブック」はもともと、世界保健通信社に「抗菌薬ハンドブック」として大野竜三先生の著書がありました。そして、世界保健通信社は当時の田辺製薬株式会社の抗生物質の担当部署に関係していました。1995年に抗生物質の製品担当者から本を改訂しなければならないのだけれども、予算が少ないのでどうしたらいいだろう?という相談を受けました。(私も田辺製薬に在籍していました)そこで、まだ一般的ではなかったwebサイトで公開したらどうだろうか?webサイトなら書籍と違って、いつでも修正が可能なので予算も圧縮できる。そのような案が社内で煮詰まり、企画書を持って、当時浜松医科大学の教授だった大野先生に面会に行きました。大野先生は、それは面白いとすぐに許可していただきました。1995年の終わり頃だっと記憶しています。(大野竜三先生は、現在、愛知県がんセンター名誉総長)

 

それからがイバラの道でした。まだ、webサイトを作れる会社が少なく、春頃までデザイン会社と議論を進めました。さらに、複合検索という機能をつける目玉企画がありました。患者さんから採取した血液から特定の菌を特定したら、その菌をどのように投与するか、どの部位に到達させるか、など複合的に条件を入れて最適な薬剤を結果として表示させるというものです。当時、すでにoracleデータベースが商品としてありましたが、大変高価でこれを導入する予算はなかったのです。

そこで、ある一定の条件下で絞り込まれる薬剤をリストにして、一つ一つ静的なページを作成してそのページを表示されるという「なんちゃってデータベース」を作りました。この作業が非常に時間を食ったのを覚えています。(現在は薬剤特性検索という名称になっていますし、SQLデータベースが動いているようです)

さらにデザイン会社が出してきたhtmlファイルがとてもいい加減だったことがあります。デザイン会社の人の立場に立てば、非常にわかりづらい薬剤の名前は間違えても間違いに気づかないということがあり、結局、同僚の友人と二人で、htmlの作り方を勉強して全てのhtmlファイルを書き直しました。当時は、ホームページを作成するソフトなどなく、全てテキストエディターで書きました。

一方、各薬剤に関するページを大野先生は一人で延々と書かれました。当然、内容に関しては大野先生が全責任を負わられているので、その執念は相当のものでしたでしょう。

 

そうして、1996年12月に公開に至りました。あれから20年、サポートは、田辺製薬・グラクソから大日本住友製薬に引き継がれ、度々改訂を重ねて今でも抗生物質を調べる時のトップ1を維持しています。さらに薬剤のインターネットデータベースは今でさえこれだけのはずです。それほど、制作とメンテナンスは難しいということです。

昨今、DeNAのWelqに見られるような、一般の人をカモにするような医療健康情報がgoogleの検索上位を占めているのを見ると情けなく感じます。本当に正しい医療情報を届けるのは血の滲むような努力が必要なのです。そして、20年トップを走って来られたのも、その内容の信頼度だからだと自負しています。

抗菌薬インターネットブック

 

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